• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント
人通りの絶えた昼下がりのアランフェス(マドリッド州 スペイン)
人通りの絶えた昼下がりのアランフェス(マドリッド州 スペイン)

全体観をもつことは、ビジネスだけでなく日常生活を含め人生全般に役立つ。
前回、リーダーに必須の三つのスキルのうち、そのひとつがコンセプチュアル・スキル(全体観をもつこと)であることを述べた。

いま、世界のすべての国が新型コロナ感染の渦中にあり、さまざまなニュースが流れている。
この感染症の素性はまだよくわからないようである。そういう状況であっても不安をあおるのではなく不安を鎮め冷静な判断に役立つ情報も必要である。しかし、そういう情報はニュースの価値は無いらしくほとんど見かけない。
そこで、筆者の仕事である経営コンサルタントの立場から不安をあおるのではなく、その逆の情報または客観的事実をチェックしてみた。「逆の方面」からの観点をもつことも、全体観のひとつである。

まず、過去の歴史との対比をしたい。感染症と言えば14世紀に世界的に大流行した黒死病(ペスト)がある。西欧では人口の1/3が死亡したといわれるが、数字を逆から読むと人口の2/3は生き残ったということである。当時は満足な治療法はほとんど無かったはずであるが、2/3の人たちは疫病の蔓延から自力で脱出した。現代の文明国では、衛生、栄養、医療などどれをとっても当時とは比較できないほど進歩した高いレベルにある。このような社会基盤が背景にあることを考慮すれば、もちろん油断は禁物であるが、むやみに騒ぎ立てて不安をあおる必要はない。それでは百害あって一利なしであり、黒死病の時代と何も変らないことになってしまう。

次に、わが国には感染症の対処にきわめて有効な文化がある。
①日常から手洗いとうがいなどの国民的習慣が行き渡っている。これは日本が世界に誇るべき保健衛生文化である。海外旅行で体験することだが、お手ふきやおしぼりを見かけることはまれである。食事の前に手を洗う光景は見たことがないと言ってよい。
②何であれ「抗菌仕様」が普及している。乳幼児用品ならともかく、エスカレーターの手すりや電車のつり革まで「抗菌仕様」があるのはやり過ぎではないかと思うくらいである。
③花粉症のためマスクをつける人は多く、わが国ではマスク装着に全く抵抗がない。必要があればつけるという合理的な習慣が定着している。これもまたわが国だけの特異な文化であろうが、今回の新型コロナ禍でマスクの効用を理解した国々ではこの文化が広まることになるだろう。
④マスク装着はウイルスそのものに対しては効果がなく、たんに飛まつ感染の防止のためとされるが、それでも装着率はきわめて高い。自分が感染している場合を考え、他人に迷惑をかけたくないという配慮の表れであろう。理由はともにかく、私見に過ぎないが国民的マスク装着は今回のウイルスに対して「見えざる防御網」になっているのではないかと思う。

結論として、わが国の対応は死亡率の低さで特筆すべき優れたレベルを維持している。
初期対応が遅すぎた、検査数が少なすぎる、非常事態宣言を出しても強制力が無いので効果は無いなど等、さまざまな批判が内外から出ている。ところが、最終的な指標である死亡率ではわが国は圧倒的に低いという事実がある。しかも、今のところ医療はその機能を発揮しており、いわゆる機能不全には至っていない。これらの偉業を真っ先に取り上げるべきであるのに、それをしないで黙殺する。最前線で奮闘している人たちに対する礼儀や心からの感謝の表明が著しく欠けている。こういうテレビ報道人に社会の木鐸などはもともと期待していないが、あまりに非礼であると感じる。

2020.4.13 津曲公二