セゴビア(スペイン)の水道橋
新型コロナ感染症のため、世界のどの国でも経験したことの無い事態が起きている。誰もが 何よりも困惑することは、どういう経緯をたどってこれがいつ終息するのかがわからないことだろう。
このような難局を乗り切るために望まれることのひとつは優れたリーダーの存在である。おりしも、「工場管理」4 月号(日刊工業新聞社)に特集記事が掲載された。
未来を担う人材を底上げ〜「次世代現場リーダー育成7つの秘訣」
筆者が担当したのは7つのうちのひとつ『難局を乗り切る問題解決力を 磨かせる秘訣』。
ここで「問題解決力」を構成するものとして「全体観」(コンセプチュアル・スキル)をとりあげた。
ロバート・カッツは、リーダーに必要なスキルとして三つのスキルを提唱している。
- テクニカル・スキル・・自分の専門領域での知識や経験を自由に駆使できる
- ヒューマン・スキル・・人をやる気にさせて組織を束ね、組織力を発揮させる
- コンセプチュアル・スキル・・何か変化が起きるとそれが全体にどのような影響を及ぼすかを認識できる。また、あることが起こったときそれが影響する関係を想像でき 必要な行動がとれる
三つのスキルのうち二つについては、ほぼ読者のイメージ通りだろう。しかし、コンセプチュアル・ スキルはかなり耳慣れないのではないだろうか。直訳ふうに「概念化スキル」とされるが、「もの ごとの全体を見通す力」という意味で筆者はいつも「全体観」という意訳した語彙を使っている。つまり、この漢字表記のほうがより的確に意味を伝えられるからである。
いま、世界は感染症の大流行という非常事態に直面している。このような難局を乗り切るために必要なリーダーの問題解決力、それを構成する重要なスキルのひとつ「全体観」について述べる。
次回は、我々の日常で全体観の対極にあるもの、全体観を身につけるために必要なこと (語彙の選択、どのような着眼点があるか、技法の基本にある思想の活用)などを順次とりあげていく。
2020.3.31 津曲公二