• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

カイゼン講演 チーム討議のひとコマ クラスノダール(ロシア南部の都市 クラスノダール地方の行政の中心)
カイゼン講演 チーム討議のひとコマ
クラスノダール(ロシア南部の都市 クラスノダール地方の行政の中心)

日本で働くロシア人女性の感想

ネットでこんな記事を見つけたと知人から聞きました。次のような日本の良いところが紹介されていました。感想をアップしたのは日本に来て働いているロシア人女性です。

 仕事で努力すれば評価され、その分報われる 

そもそもロシアを含め欧米では、指示されたことだけやるのが仕事とされています。指示を超えた個人の努力や工夫は基本的に想定外でしょう。場合によるとルール違反になるかもしれません。割り切り過ぎる言い方かもしれませんが、筆者はこのように考えています。
仕事に対する従業員の努力を評価しかつ報いることは、わが国では当たり前のこととして実践されています。ほとんどの企業で、定期的に従業員の努力(業務改善:カイゼン)に対して表彰する制度があります。

ロシア出張で企業訪問

筆者はロシア日本センター(外務省が支援する現地NPO組織)の招請により、2015年から毎年ロシアに出張しました。日本の文化を紹介するための「カイゼン講演」の講師として5回の出張で延べ20都市を訪問しました。カイゼン活動はわが国では、とくに製造業やサービス業の現場で活発に実践されています。それをロシアの方々に講演を通じて紹介しました。講演終了後、企業訪問がありました。訪問した企業の多くはカイゼン活動を実施中でした。

カイゼン活動の効用

カイゼン活動を実施している企業ではわが国と同じような職場の雰囲気を感じました。つまり、「指示されたことだけやるのが仕事」といった雰囲気が全く無いとは言いませんが、割合に少ない感じを受けました。作業者に質問しても気軽に率直な返事がありました。作業者と管理職の関係もカイゼン活動を通じて良くなったとのことでした。
とはいえ、カイゼン活動を実施している企業は、ロシアではごくわずかだそうです。本稿の初めで紹介した日本で働くロシア人女性の「仕事で努力すれば評価され、その分報われる」という企業はロシアにおいては例外的存在なのでしょう。

これからカイゼン活動を導入したい企業を訪問

経営者の要望でカイゼン活動をまだ実施していない企業(製造業)の工場を訪問したことがありました。工場はカイゼン活動の基本である整理・整とん・清掃が全くなされていませんでした。見学通路も指定されていないので、よく注意しながら歩きました。同行した企業の本社スタッフは床にある部品につまずき、あやうく転びそうになるほどの乱雑さでした。
工場見学後、社長の要望で作業員のリーダー約10名に集まってもらいカイゼン活動の紹介をすることになっていました。工場の実態が想像よりも悪かったので、筆者は準備した説明内容を変更して「安全な職場づくり」を主題にして説明することにしました。乱雑な職場では事故やケガが起りやすい、整理・整とん・清掃をきちんとやれば安心して働ける職場になるといったことを説明しました。質問もなくあまり納得された雰囲気ではありませんでした。
安全な職場環境は、どの国であれまずは経営者がその気にならない限りできるものではありません。筆者から見ると「指示されたことだけやるのが仕事」というレベルにすら達していない職場環境であると感じました。

テレワーク導入に伴い新たなスキル開発が加速する

テレワークは、これからのわが国において働き方のスタイルのひとつとして定着すると思われます。その定着に伴いテレワークで必要となる新たなスキルが開発されることになるでしょう。

テレワークにおいては大別すると次のような三つの業務に対応するスキルが重要になります。

①通常業務についての定例報告
②追加や変更に関する業務についての進ちょく報告
③特別な業務、例えば緊急事態発生への対応 

これらに必要なスキルは、まさにプロジェクトマネジメントのスキルに共通するものです。
筆者は、プロジェクトマネジメントとは「仕事の正しい進め方」と考えています。テレワークの現場には指示監督する上司はいません。そのような職場環境で業務を円滑に進行させるためには「仕事の正しい進め方」を可能にする環境整備が前提になります。
その前提のもとで、新たな業務スキルが開発されることになります。冒頭で紹介した日本で働くロシア人女性の感想「仕事で努力すれば評価され、その分報われる」ことについても、同様に加速することになるでしょう。