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津曲 公二

サン・パウ病院(世界遺産) バルセロナ スペイン
サン・パウ病院(世界遺産)
バルセロナ スペイン

東京都の医師80%がこの非常事態に協力していない

ジャーナストの櫻井よしこ氏が、テレビの報道番組で厳しく指摘していました(5/20、BSフジプライムニュース)。
これによると、東京都の開業医師(以下、医師と略記)12,000人のうち、コロナ治療に協力しているのは2,600人に過ぎず約80%が協力していないとのこと。

  • 自衛隊が出動して大規模接種センターを立ち上げたが、これはまさに国家の非常時の最後の砦といった措置であること。
  • 歯科医や薬剤師の方々にも協力してもらうことを検討中であること。

こういったまさに非常事態というべきときに東京都の医師の約80%が協力しないとは何と言うことかと櫻井氏は怒りを述べておられました。同時に、約20%の医師の方々は真剣に使命を果たされていることも強調されていました。

接種混乱の真の原因は

筆者はこのことを聞いて、ワクチン接種混乱の真の原因についてようやくはっきりと確信することができました。ワクチンの供給は順調に進んでいる。ワクチン接種を待ちわびている人はたくさんいる。それにも関わらず東京では遅々として進んでいない。打ち手の医師が足りない、足りないのは協力していないからです。しかも協力しない医師が約80%という。この非常事態に、医師の倫理はどこに行ったのかとじつに情けなく感じました。混乱の真の原因の第1は東京都の医師の非協力です。

医道、地に落ちたり

医師という職業は社会的に最も信頼される位置づけにあると思っていました。東京都のこの状況を聞いて、筆者の思ってきたことと相当なギャップを感じています。
繰り返しになりますが、政府は最後の砦である自衛隊を出動させた、そして歯科医や薬剤師の方々にも協力してもらうことも検討中です。それにも関わらず、本来の医師の使命を果たすことに協力しない医師が約80%も存在する。この状況は医師の倫理崩壊です。倫理無き医師はこの国には不要です。医師免許を返上してもらいたい。総理大臣がそのように勧告してよいと考えます。

トップリーダーの問題把握力の欠如

混乱の真の原因の第2はこれです。本エッセー前々回(第53回)で英国の秀逸なワクチン接種計画を紹介しました。参考までにそのポイント三つを紹介しておきます。

  • まだ感染者がひとりも報告されていない昨年1月、専門家によるタスクフォースを立ち上げた。
  • 世界中の製薬メーカーから開発中の有望なワクチン5種に絞り込み、ワクチンの「青田買い」に着手し必要数を上回る数量を確保した。
  • 接種での打ち手が足りないとわかると、法律を改正し適性審査と訓練によりボランティアの打ち手10,000人を養成した。

これは優れたトップの強いリーダーシップのもとで実行されたものでした。世界的に見てもまれなことですから、わが国の政府にこのようなレベルをつねに期待してはいません。しかし、少なくとも問題はどういうことで、何が原因かなどの把握はやってもらいたい。それに基づき、対策を選択する。こういう問題解決の常識的な手順を踏めば、現在のような混乱は起きなかったはずです。

非常時のリーダーは命令せよ

わが国の場合、平時は「和をもって尊しとなす」の精神でたいていのことは収まるわけですが、非常時にこれでは時間がかかり過ぎます。従って、非常時のリーダーは命令すべきです。
協力しない医師が80%もいるような場合、自衛隊が出動する前に医師たちに強い要請(ほぼ命令)をすべきです。そうすると「権限が無い、法律が無い」と言われるでしょう。しかし、それらが無いからこそ必要な行動をするのが国のリーダーの役割です。必要なことを何もしないで座して待つだけのリーダーだけだとしたら、わが国には衰退の道があるだけです。法律に無いことをやったら、その後、国会に当否をたづねればよい。否定されたら退陣するだけです。

受付の不具合が住民の信頼喪失を招いている

接種システムの不手際で「電話がつながらない」「やっとネットに接続しても既に締め切られていた」などの苦情がたえません。筆者の居住する横浜市では早いもの勝ちの仕組みです。いくら電話してもつながらない、またネット操作に不慣れな住民は国から見離されたと感じるとともに、その焦燥感や不安感は容易に想像できることです。

公平性を重視したと言えば聞こえは良いが、そもそも横浜市のような大都市でこのような全員がそれぞれアクセスするやり方は無茶としか言えません。横浜市の総人口376万人に対して、75歳以上は48万人、65歳以上は93万人です。ちなみに電話回線は20本(当初は10本だった)とのことです。不通になるのは当たり前で、想像力が無さ過ぎます。

最適なシステム(仕組み)を選ぶ 

混乱の真の原因の第3について、その対策です。政府にしても自治体にしても(自治体では非常にうまくいっているところもありますが)、もう少し気を効かしてもらいたい。
公共か民間かを問わずどのような仕事であれ、客観的な評価に耐えるものをつくり上げることが欠かせません。そしてその能力を身につけない限り、同じような失敗を(同種の失敗と気づかずに)繰り返すことになります。
その仕組み(施策、システム)は客観的な評価に耐えるか、ここにかかっています。