• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

都城島津邸にて 都城市 宮崎県
都城島津邸にて 都城市 宮崎県

日本は仕上げの段階では勝つが・・

評論家で作家の日下公人さんの著書で読みました。「日本は仕上げの段階では勝つが、もうそのときは世界の土俵は別のところに変っている」、例えば1990年代ごろまで日本の製造業(とくに自動車やエレクトロニクスなど)は絶好調でした。その後、米国は金融やICTにシフトしました。製造業に強みがあったドイツはここでは勝ち目が無いと考えISOやインダストリー4.0などの標準化ビジネスへ勝負の土俵を変える作戦をとっています。
わが国はそのようなやり方は不慣れですが、欧米ではよくある作戦です。F1レースでホンダが勝ち続けると規則を変更し、スキーのジャンプ競技で日の丸飛行隊が活躍すると同様なことが起りました。我々としては今後も同じと考え、節目でうろたえないようにする必要があります。

自動車業界は日本が最優位に

トヨタのハイブリッド車(HV)プリウスは1997年にデビュー後、いまや世界の市場で普及し燃費改善に大きく貢献しています。その後もプラグインハイブリッド車(PHV)などのバリエーションも充実し世界的に確固たる地位を築きました。技術的にも主要な特許をおさえて国内と海外いずれにおいてもライバルの存在を許さない業績を続けています。ところが、絶好調に見えるところに大きな落とし穴がありそうです。競合する海外勢も黙ってはいません。世界の各社は国の政策とも協調し、勝負の土俵を電気自動車(EV)に変えようとしています。

同業者の巻き返しと新規の参入者

1.米国バイデン政権のグリーン革命 
2035年までに電力のCO2排出実質ゼロ、充電ステーション50万箇所設置、全ての公用車を排ガスゼロに。
2.ドイツVW社 
ディーゼルエンジンへの未練を断ち切りドイツ政府の目標と協調し、2030年までに全面的にEVに転換。電池専門の工場も2箇所建設する計画を発表。
3.米国テスラ社 
自動車としてはEVに特化してスタート。宇宙ビジネスを含むハイテク企業としての認知が急上昇、昨年末には時価総額でトヨタの2.5倍を記録。マーケットの期待はトヨタではなくテスラか。
4.米国アップル社 
異業種からの手強い新規参入者。アップルカーでEV全自動運転システムを確立しデファクト化を狙うか。

これらをまとめると、海外ではEVへの転換が急速に進んでいることがわかります。わが国の自動車業界はこのような世界の潮流に無頓着なように見えます。これまでの成功に囚われ過ぎると手痛い失敗を招くのではないかと恐れます。自動車業界はわが国の産業を支える大黒柱なのですから。

中国で話題のEV その価格48万円

これについてネットでの反響はさまざまです。安全対策、耐久性や電池の性能などについて否定的なコメントが多く見られます。中国農村向けですが、実際にどうなのかはいずれわかることでしょう。筆者はこの企画を生み出すマーケティングの活力に感動しました。わが国の自動車メーカーは消費者のニーズにぴったりのこのような商品をなぜ考えないのかと疑問をもちます。トヨタは同種のものを既に発表していますが、価格が3倍ですから話になりません。これを半額以下にすればわが国消費者から大きな支持が得られるでしょう。

変革期の新旧比較は冷静に

電気自動車(EV)とハイブリッド車(HV)の比較で、プラスマイナスさまざまなコメントがあります。クルマが初めて登場したときは「道路も無いのにこんなものが使えるか」といった種類のコメントもあったことでしょう。
現在の社会にぴったり適合しているものと、これからの時代に採用するものとの比較は科学と技術に基づいて冷静におこなうことが欠かせません。EVへの転換で浮上する課題は次のようになると考えます。

① EV用電池の課題 性能向上とコストダウン、希少金属の不使用、リサイクルと廃棄
② EVの課題 自動運転システムの開発と標準化の取り組み
③ 電力インフラの課題 電力供給など国策との連動で課題化 

とくに電力インフラについては、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っているわが国では太陽光発電の活用で他国に比べて大きなメリットが期待できると思われます。

とるべき道を誤らないよう冷静な判断を

これまでの自動車ビジネスで仕上げの段階ではわが国はほぼ圧勝しました。
しかし、土俵はもう大きく別のところへ、EVへ変わろうとしています。これまでの大きな成功が偏見や囚われを生み出すとすれば、冷静な判断ができずに道を誤ることになります。世界のルールを変えることには不得意でも「課題が明確になり目標が定まると活動を加速できる」。これがわが国の得意技です。世界の潮流に大きな変化があっても、とるべき道を誤らない限りわが国の得意技を活かすことができるでしょう。