• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

カイゼンでピンチをチャンスに(日本カイゼンプロジェクト会報2021.3 no.4)
カイゼンでピンチをチャンスに(日本カイゼンプロジェクト会報2021.3 no.4)

カイゼンでピンチをチャンスに

一般社団法人日本カイゼンプロジェクトは、主宰者である柿内幸夫会長がわが国の中小企業を元気にする目的で設立されました。会員の皆さま向けにWEBサイトとメルマガ配信があります。この他に会報として小冊子があり、3月発行の特集は「カイゼンでピンチをチャンスに」です。今回は、この会報に掲載された筆者の投稿記事を紹介します。カイゼンはわが国独自のものであり、これを活かすことが経営の王道であることを述べています。

わが国のカイゼンDNAを活かす

多様性はわが国の大いなる資産

カイゼンを考えるとき、わが国の特長にあらためて驚く。例えば、多様性である。クリスマス、除夜の鐘、初詣でなどは三つの異なる宗教に由来する国民的イベントとして定着している。わが国にはもともと神道があったが、聖徳太子の時代に仏教が伝わった。長い年月を経て、対立より協調がわが国の特長となった。それは対立する意見や感情までが混在し得る独特の文化となった。これが日本の多様性の原点となった。他の国に例を見ない日本独自のものである。

教育は多様性を育む母体

仏陀の教えも多様性を育てることに弾みをつけた。教えによると、人生で優先する第一位は知識、つまり学ぶことである。次は良い行い。三番目が信仰。信仰が第一位でないことが興味深い。これはわが国が教育を重視する要因のひとつになっているのではないだろうか。
教育は知識を学ぶだけでなく、物事や考え方に様々な違いがあることも教えてくれる。教育によって多様な観点から物事を理解することができるようになる。これによって、さまざまなアイディアや技術が養われる。また、わが国の教育では早期に個人の特性を決めつけることなく全人間的な立場で幅広い教育が行われている。これもわが国に多様な能力を持った人材を育てる要因となっている。

ふつうの人たちが成果を出し続けるわが国

米国の業績絶好調企業はGAFAに代表されるが、いずれも天才的な人による経営で成り立っている。従業員の学びや良い行い、自律や成長などは無関係であり、純粋に利益効率のみを追求する経営である。永続する企業経営ではなく、勝ち逃げの経営のようである。わが国でも主として大企業でこのような利益効率優先の経営を真似ようとしているが、うまくいかないだろう。
わが国の特長である多様性を無視しているからである。多様性の極致として、わが国にはカイゼンの文化が根付いている。異論があってもお互いに認めたうえで建設的な結論を出すことができる。さらに、状況の変化に対して自らの学び(気づき)と行動(実践)が自律的に生まれる。このような自律性を経営者が推奨することも個人と組織の成長につながっている。

他に無い独自のものを活かす

多様性とは異なる意見、異なるアイディア、異なる技術などを認めることである。カイゼンは多様性の存在が大前提となる(・・対立する意見を許容しない欧米の文化ではカイゼンはきわめて困難だろう)。さらに、異なるもの、バラバラなものをつなぐときノリのような欠かせないものがある。これがすり合わせである。多様性はすりあわせによって活性化していく。多様性とすり合わせを武器にして、カイゼン最高の進化形である「カイゼン4.0」のレベルを目指す。
このカイゼンDNAはわが国にしか存在しない。他の国には無い独自のものを活かす、これがわが国企業経営の王道ではないだろうか。

 

注記
「カイゼン4.0」・・経営トップの深い参画を前提とする全組織協働型ユーザーインのカイゼン
出典 柿内幸夫著「スタンフォード発 企業にイノベーションを起す カイゼン4.0」