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津曲 公二

澄みきった青空と真っ直ぐな道(美瑛 北海道)
澄みきった青空と真っ直ぐな道(美瑛 北海道)

仕立てられた辞任劇

東京五輪組織委員会会長の問題発言で、またもテレビ報道の得意技である「映像切り取り技術」が発揮された。いつもの手法である。委員会の全体を傍聴することができれば、世界的な醜聞になるような内容ではなかったのではないか。なぜなら、もしそのような発言があったとすれば同席された委員の方々から「撤回すべき」との抗議があってもおかしくなかった。途中で退席された人など全く無かったということは、そもそも存在した事実の「震度」そのものが疑わしい。事実が激震レベルであったとしたら、注意や抗議を一切しなかった同席者は何もしなかったという責めを負うことになる。

マスコミの堕落

しかし、事態がここに至ったのでどういう事実があったか、その追及は止める。また森前会長の問題発言もここではとり上げない。前会長はこのような問題を起こすことが多かったことは事実だが、ここで取り上げたいことはマスコミの堕落である。発言後に起こったことはテレビ報道による「つくられた醜聞」だった。今回のことで、森前会長の「えひめ丸事故」による首相退任と全く同じ手法が使われたことを思い出した。このときは海難事故を、国家的危機管理の対象に仕立て上げ当時の森首相を退任に追い込んだ。テレビ報道のやり方は今回と全く同じであった。

えひめ丸事故とは

以下、ウイキペディアから引用する。えひめ丸事故は、2001年2月10日8時45分(日本時間)、アメリカ・ハワイ州のオアフ島沖で愛媛県立宇和島水産高等学校の練習船だったえひめ丸に浮上してきたアメリカ海軍の原子力潜水艦グリーンビルの不注意で衝突し沈没させた事故。乗務員の35人のうち、えひめ丸に取り残された教員5人と生徒4人が死亡し、救出されたうち9人がPTSDと診断された。
当時の森喜朗首相は事故発生時に休暇を取得、ゴルフをしていたが、事故の一報ののちもそのままゴルフ場に留まったことが大きな問題となり、内閣総理大臣を辞任した。

フェイクニュースで首相を退任に追い込む

ゴルフプレイの映像が繰り返し放映され国民の印象を決定的に悪化させた。だが、この映像は当日とは別の夏の日に撮影されたものだった。放映されたニュースでは「危機管理が必要なときにも関わらず、ゴルフに興じていた」ような印象に仕立てられていた。まさに悪意をもった意図的なつくられた虚偽のニュース、フェイクニュースが全国に放映された。わが国は、フェイクニュースで首相を退陣させることができる国になった。

フェイクニュースに目を覚ますとき

えひめ丸事故は20年前のことである。マスコミの堕落はその後も続きさらに重症化した。もはや手の打ちようが無いところまできているように見える。残る手段は我々自身が目を覚ますしかない。このような手法がやすやすと成功するようになると、わが国は他国の介入でどのようにも操作されることになる。米国の大統領選挙では、サイバー攻撃が常態化している。わが国の場合、隠れもせず堂々とテレビなどで政治介入が行われている。テレビ局などマスコミはごく一部を除きほとんどが悪意をもつ他国に弱みを握られているのだろう。振り込め詐欺の注意喚起は放映されても、フェイクニュースの注意喚起は放映されない。我々自身が目を覚ますしかない。