• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

サッカー実況放映中のかなり大きめのバル(デリシャス地区 マドリッド スペイン)
サッカー実況放映中のかなり大きめのバル
(デリシャス地区 マドリッド スペイン)

初めてのスペインは

日産自動車勤務時代、バルセロナの工場に出張しました。スペインの自動車会社だったモトール・イベリカ社を日産が買収し日産からいろいろな業務を支援していました。1992年のバルセロナオリンピックの3年前だったので、市内のあちこちで建築工事が行われていました。仕事のほうは出張前に現地に依頼していたことがあまり進んでおらず、スペイン人スタッフと通訳を介しての会話はもどかしくて疲れました。仕事が終わって、現地駐在の日本人スタッフと一緒に食事に出かけました。会社にいるときと世界が一変した感じがしました。バル(居酒屋)やレストランに行くと、にぎやかで活気に満ちていました。

床がゴミだらけのバルに行け

レストランは午後8時ごろからなので、それまでの時間はバルに行きました。軽くビールとおつまみ程度です。床はゴミだらけとは言いませんが、日本のようなきれいさはありません。くずかごはあるのですが、客は全く気にせず床に捨てていました。人気のあるバルほど客が混み合い床はゴミだらけになる、ということでした。道路や広場などは深夜や早朝に清掃車が出動しているようですが、きれいなのはその直後だけですぐにゴミだらけになると聞きました。

老婦人たちが夜遅くまで談笑している

バルセロナは地中海性気候のため12月でも暖かく、バルやレストランでは室外のテラス席もにぎわっていました。隣のテーブルで、二人の老婦人が楽しそうに会話していました。我われは2時間ほどそこにいましたが、彼女たちはまだ動く様子はありませんでした。日本では見かけない光景に驚くと共にスペインの人たちの生活スタイルに感動しました。人生を楽しんでいる!また、必ずスペインに来るぞと思いました。それから10年後、企業勤務を辞めてからは毎年スペインに出かけています。

スペインの魅力はバル巡り

世界遺産の多さではスペインは世界でもトップクラスのようですが、筆者は名所旧跡よりもスペインのバル文化が気に入っています。中でもマドリッドのバル激戦地区でのバル巡りは最高に面白くスペインに行くたびに楽しんでいます。通常、ビールまたはワインをひとつ注文します。するとドリンクには必ずツキダシがついてきます。ツキダシはそのお店で提供しているメニューのひとつが少しだけ出てきます。店舗間の競争が激しいので、お店によってこれがさまざまなのです。ドリンクをお代わりするとまた別のものが出てきます。ドリンクを3~4杯注文すると、ツキダシだけで軽く食事の代わりになるお店もあります。4~5名で一緒に行くとツキダシがひとつのお皿で出てきます。これが人数の2倍ほどの量で出されることも珍しくありません。このように気前の良いバルはたいてい人気のお店で繁盛しています。

マドリッドとバルセロナ

スペインは日本と比べて不便なこともいろいろあります。新幹線など指定席に乗車するとき、ホームの案内は全く行き届いていません。途中駅で乗車するときはどこで待てばよいかわからず困ります。電車が入線してきたら、ホームで待っていた乗客は全員一斉に走り出すことになります。スペインの人たちはとても親切ですが、社会システムには不備が目立ちます。ところが、バルやレストランのサービスは見違えるようなレベルです。さきほど述べたような気前の良さがあります。マドリッドで聞いたことですが、気前が良すぎてクビになったボーイさんもいたそうです。
バルセロナでは、残念ながらドリンクに無料でついてくるツキダシの文化はありません。もちろん、わが国の居酒屋にある無礼な風習などはどこを探してもありません。わが国の無礼な風習とは、頼んでもいないツキダシ(しかもこれがたいていひどい食品)を押しつけて代金を請求することです。バルセロナの海辺のレストランでのことです。妻と二人で注文したひと皿を食べていて、途中で注文とは異なるものだと気づきました(二人ともお腹が空いていたのですね・・)。そこで「違うよ」とボーイさんに伝えたら「あ、そう、悪いね」といった感じですぐに対応してくれました。ひと皿の料理は半分くらい平らげていましたが、そんなことは全く気にもならないようでした。しばらくして、正しいひと皿が届きました。このお店はお気に入りで、バルセロナに行くたびに出かけています。

サービスレベルは、どの国でもおカネしだいということでしょうが、スペインはバルとレストランに限ればわが国より抜きん出ています。また、英国や米国で感じるような日本人に対する扱いの差異を感じることもありません。スペインの人たちには、大航海時代に世界に覇を唱えた国の風格が今なお残っているように感じます。