• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

プエルタ・デル・ソルのお巡りさん(マドリッド スペイン)
プエルタ・デル・ソルのお巡りさん
(マドリッド スペイン)

空港ラウンジ受付でのちょっとしたトラブル

毎年のカイゼン講演で、ロシアに同僚と二人で出張したときのことです。
モスクワのシェレメチェボ空港で3時間ほど乗り継ぎの待ち合わせがありました。現地事務局の日本人所長の案内で、待ち時間をゆったり過ごせるビジネスラウンジに行きました。所長は会員なので同伴者ひとりは無料で利用でき、二人目の同伴者は有料だが料金はわずかということでした。ラウンジ受付と所長が交渉していますが、ちょっと時間がかかるようでした。所長が「お二人は先に行ってくつろいでいてください」とのことで、我われはドリンクなどを選びゆっくりしていました。ところが、なかなか交渉に時間がかかり30分ほどして所長はやっと我われに合流できました。

わけを聞くと「有料分支払いの機器が不具合のため支払いができない。それでひとりだけ入室を断られた」。筆者「支払いができないのは先方の責任ですよね」。所長「それは受付も承知のうえだが、絶対に入室OKしない」「それでどうやってOKになったのですか」「うしろで待っていた人が『オレはひとりだ。彼(所長)をオレの同伴者にしてくれ』と言ったのでやっとOKになった。ロシアにはこういう親切をする人がときどきいるのです」

筆者としては、受付の融通のきかなさにあきれました。所長はよくあることですといった雰囲気でしたが、筆者はここの組織はどういう教育をしているのだろうと気になりました。ところで、ロシアでは何につけても不具合は当たり前のようです。筆者はクレジットカードの通信不良を経験したことがあります。カードは有効なのに機器が働かない。そのときは、もうひとつ別会社のカードを持参していてこちらはうまくいきました。設備や機器の不具合が多いなら、その対処策をかねてから準備すべきと思いました。しかし、どうもそういう発想は無いようでした。

米国の戦争映画に見る命令と実行 

中東の紛争地域で、テロリストに対処する爆弾処理班の活躍を描いた米国映画を見ました。あるとき、軍曹である主人公が上官の将校から作戦実行を命令されます。軍曹はその作戦がきわめて大きな危険があるとして、代わりに別の作戦案を提案します。しかし、彼の提案は受け入れられず命令どおりの作戦を実行することになりました。そのとき、軍曹はこのやりとりを記録してくれと依頼します。つまり、軍曹はチームを預かる責任者として命令の危険度が高いことを指摘したうえで代案を提案した。このいきさつをきちんと記録に残してほしいという要求をしたわけです。このような要求とそれを記録することは当然のルールらしく、上官は承諾します。

柔軟に動ける組織とは

作戦実行の現場ではこの軍曹がそのつどの的確な指揮で危険を乗り越え、チームは最悪の事態を回避します。現場では状況がつねに変化します。上官の作戦どおりにはいかないので軍曹がつねに独自の判断をします。上官の作戦案に異論はぶつけるが、決定した命令には従う。ただ、現場の状況変化にはチームのリーダーとして必要な対応を独自に判断し実行する。命令に盲従することは無い。組織の指揮命令系統を守り、かつ現場の状況変化には柔軟に対応できる。組織活動の理想的な姿が描かれていると感じました。

どのような組織であれ、活動の現場では想定外のことがさまざまに発生します。そのとき、上司の指示が無いと動けないようでは、組織は硬直化します。想定外のことでも末端で迷わず判断できることが欠かせません。フィクションとしての映画にこのようなメッセージが込められているとしたら、柔軟に動ける組織とは、一般的にはなかなか難しいということかもしれません。