• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

メルセ祭の巨大人形(バルセロナ スペイン)
メルセ祭の巨大人形(バルセロナ スペイン)

ハンコ不要に

約1万5000件の行政手続きのうち、99%で押印廃止になるそうです。便利になりますね。書類が押印不要になると事務が簡素化できるのは、役所に限りません。企業でも何か承認をもらうとき多くのハンコ、役職者の押印による決裁が必要でした。まず、筆者の企業勤務時代の体験を書きます。

決裁をもらうまでにはかなりの時間が必要だった

筆者が工場勤務時、安全対策のため至急の工事が必要になりました。数100万円でしたが、工場長の決裁上限を超えるので本社役員の決裁をもらう必要がある。それでは時間的にとても間に合わない。工場内であればハンコの数はひとケタですみますが、本社に行くと優に10を超えるし最短でも2週間は余分な時間がかかります。こちらとしては1週間だって待てない・・。

時間短縮の裏ワザはルール無視

そこで、上司(課長)のアドバイスは裏ワザでした。工事全体をいくつかに分割し、それぞれが100万円未満になるようにする。工場長宛の複数の申請書をつくり、すぐに部長に持参しました。これをもらえば、あとは経理課を経て工場長の決裁がもらえます。ところが、部長はすぐにはハンコを押してくれずいろいろとお説教されました。今になって思うことは「規則に反することを通常業務のように扱ってはいけない」という教育だったのでしょう。
数年して、全社的に大幅な権限委譲と決裁基準の変更が実施されました。ほとんどが部門内で決裁できるようになり、ハンコの数は激減し承認までの期間も大幅に短縮されました。社内規則に反することをあえてやる必要はなくなりました。

ハンコ(印章)はわが国の素晴らしい文化

行政改革でも実印は存続するようです。しかし、行政やビジネスでの存続に関わらず印章はわが国の素晴らしい文化をかたちづくるもののひとつです。
例えば、さまざまな人生の節目で記念写真の撮影は世界共通の文化として定着しています。印章もそのような存在のひとつです。しかし、印章は日本など限られた国にしか無い独自のものです。実業家で作家の邱永漢氏の場合、ご子息の結婚披露宴での引き出物は印章だったそうです。出席者の氏名を絶対に間違えてはいけないと細心の注意が必要だったとの苦心談を読んだことがあります。

誰にも人生の記念すべきときがある

印章のかたちは小さく、その用途は限られます。しかし、価値をこめるとしたら大きく、さまざまなことが考えられます。筆者には二人の息子がいます。成人の記念として、祖父母から孫たちへのプレゼントは印章でした。長男のときは新しくつくったもの、次男のときは曽祖父が使っていたものを削りなおしてつくったものでした。
入学や卒業、成人、就職、結婚、資格の取得など人生にはさまざまな記念すべきときがあります。このようなときに、印章は文化の香りを添えることになるでしょう。