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津曲 公二

夏まつりの花火大会(You Tubeから)
夏まつりの花火大会(You Tubeから)

最大のイベントは夏まつりの花火大会

筆者は横浜市に住んでいます。神奈川県が造成建設した住民約6000世帯の大規模団地です。かなりの人口ですので、さまざまなイベントがあります。端午の節句はグラウンドを横断する多数の鯉のぼり展示、秋は大運動会、冬はマラソン、そして最大の人気イベントは夏まつりの花火大会です。近隣ではすっかり名物イベントになり、当日の周辺道路は交通渋滞を起しています。数年前から、住民も花火大会の財政をいくらかでも支援することになり、自治会ごとに住民に花火募金を呼びかけることになりました。自治会の加入や寄付など、もちろん任意です。自治会から募金受付の会場と日時の案内がありました。

募金受付のやり方に違和感

たまたま混雑していない時間で、受付はおひとりだけでした。机にはちょっとした金属製の菓子箱のようなものがありそれは集まった募金の収納用でした。千円札一枚を渡すと、その箱のふたをあけてそこに入れると、数万円くらいが無造作に重ねられているのが見えました。ありがとうございましたとお礼を言われたので筆者は「記帳しなくてもよいのですか」とたづねました。「します?」という雰囲気で金額と氏名を記入する用紙が出てきました。
現金の受け取りをひとりでやること、必ずしも募金した全員が記帳しないことなどに筆者は違和感を覚えました。
帰宅してから、自治会で会計担当を経験したことのある先輩に電話しました。彼の応答は「企業内だとありえないやり方だね」、「(現在の)会計担当者に私から伝えておく」とのことでした。翌年から、自治会の会計担当者を含め、受付は二人体制になりました。記帳も募金した本人に必ずしてもらうことになりました。

どこでも起きている不祥事

某生命保険で超ベテラン社員が顧客からお金を騙し取る事件がありました。19億円もの金額に驚きますが、このような不祥事が絶えることは無いようです。どこであれ、お金を扱う組織ではごくありふれた犯罪になっています。
自分のお金であれば、どう野放図に扱ってもさほど問題にはなりません。しかし、人さまのお金を扱うにはそれなりの管理する仕組みが欠かせません。わが国では、このような基本について全く無関心のように見えます。それどころか、本稿のような指摘をすると「人(私)を信用できないのか」と本気で怒り出す人もありそうです。

キャッシュレジスターの売り込み

今では代金収納を記録するためのレジスターはどこの国でも当たり前のシステムとして普及しています。導入当初、日米での売り込みのやり方は両者でかなりの違いがあったそうです(山本七平氏の著書で読みました)。
次は、レジスターを商店主や経営者に売り込むときのセールストークです。
米国:従業員を正直にする機械です→ズバリ、性悪説ですね。人は放っておくと悪いことをする。
日本:(人は誰でも計算ミスをするので)ミスをチェックできる機械です→なるほど、ミスは誰にでもある。ここでは性悪説も性善説も真正面の話題にはしていません。さすがに日本らしい。

それぞれのお国柄で売り込みのやり方は異なります。しかし、現金の取り扱いでトラブル無く正確に、という導入の目的はどの国でも同じはずです。何か仕組みをつくらないと、単純ミスは起こるし時として犯罪のきっかけをつくることになりかねません。レジスターという仕組みがあれば単純ミスを減らし、また犯罪で担当者の人生を狂わせることも防止できます。

仕事がきちんと進む仕組み

筆者の兄は銀行に勤めていました。彼の勤務時代に聞いたことです。終業後、上司から「明日は休め」と指示(命令)される。翌日、本人不在の状況で本人の帳簿や書類などを洗いざらい、派遣された専門の担当者によって調査するのだそうです。本店や支店を含め、彼の知る限りトラブルや事故は皆無だったそうです。この企業において仕事がきちんと進む仕組みは、恐らくこれだけではなかったと思われます。

信頼は相互につくりあげていくもの

第28回の本欄「落し物や忘れ物が持ち主へ返る国」で述べたように、わが国は国民を善人と想定できる優れた仕組みがあります。優れているのは、国民の善意だけに頼らず安心して届けられる交番や公共交通機関の遺失物窓口などの目に見える拠点を整備していることです。落し物に比べれば、日常的なお金の取り扱いにはもっと丁寧さが必要なはずです。人さまのおカネについてはなおさらです。日本社会はまさに信頼関係で成り立つ世界でも珍しい存在だと、筆者は誇りに思っています。ただ、長い間見過ごされてそのままになっている欠陥、信頼関係を維持するためにマイナスの要因もあります。定期的に修正し補修することが欠かせません。