• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

公園で練習する闘牛士の卵たち(マドリッド スペイン)
公園で練習する闘牛士の卵たち
(マドリッド スペイン)

YouTubeのDIY

友人が面白いYouTubeを紹介してくれました。使い古した木製パレットを使って、家庭用のスピーカーボックスを自分ひとりでつくり上げる、いわゆるDIY系の動画です。40分ほどでしたが、使用する電動工具などが各種多彩で趣味としてはかなり気合が入っているなと感じました。SNSの普及でこういう趣味と実益を兼ねた情報が誰でもかんたんに得られるようになりました。電動工具がそれなりに普及し製作ノウハウもこのようなSNSを通じて誰にでも入手できる。出来映えとしては専門職のレベルに見劣りしないことも珍しくないようです。

クルマの運転は専門職の仕事だった

素人が専門職のレベルに迫る、これは明らかに進歩と言えるでしょう。例えば1960年代くらいまでクルマの運転は専門職の仕事でした。冬季はエンジンがかかりにくいのでガソリンの混合比を調整するノブが付いていました。エンジンを始動することすら、それなりのコツが必要でした。現在ではエンジン始動はリモコンでできるほどシンプルになりました。自動車の運転そのものに限れば、専門職に頼る必要はなくなりました。それはクルマの技術が進歩した結果でしょう。クルマの技術が進歩したので、まさにクルマ社会になり多くの人がクルマをビジネスにあるいはプライベートでも便利に使えるようになりました。クルマの運転が専門職でないとできない状況が続いていたら、クルマの利用はこれほどまで社会に普及しなかったことでしょう。マイカーとして個人が自由に使うこともできなかったことでしょう。

専門職の高いレベルを誰にでもできるようにする

現在、わが国は労働力不足に悩んでいます。つまり、働き手が足りないのです。これを解決するために安易に外国人労働者に頼るのではなく、問題解決の本筋を追求する必要があります。
どの職場でも最も経験を積んだベテラン(専門職)が存在します。専門職の高いレベルをその人だけのものにとどめておいては、先に述べたクルマのような進歩はありません。この高いレベルを誰にでもできるようにすることが、重要でかつ差し迫った課題になっています。あらゆる作業を合理的でわかり易くする、誰にでもできるように翻訳していく。これが技術の進歩でありベテランにしかできない仕事と言えます。高いレベルの仕事が誰にでもできるようになっても、ベテランの役割が重要なことは変わりません。さらに高いレベルを目指す、その仕事の適用範囲を広げる、異なる仕事への応用を考える、このような仕事を引き受けてもらうことになるでしょう。では、このような良い循環を生み出すためにはどうすればよいでしょうか。

組織のカルチャーを変える

わが国には「名人芸」という言葉があります。専門職の高いレベルはたいへん良いことですが、そこで止まってしまうともったいないことであると同時に、進歩を自ら止めてしまうことになりかねません。専門職の高いレベル(名人芸)には、必ず根拠があります。先に述べたように、高いレベルの作業を合理的でわかり易くする、容易化する。さらには、機械化する、自動化する。このようなことが組織で常識となり習慣化する。つまり、組織のカルチャーを変えることが現在のわが国で重要な課題となります。これが働き手不足を解消する本筋の解決策と考えています。同時に、このようなカルチャーの変革は製品やサービスの品質やコストにも好影響をもたらすことになるでしょう。