• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

奇岩の景勝地 モンセラの遠景(バルセロナ スペイン)
奇岩の景勝地 モンセラの遠景
(バルセロナ スペイン)

こんどの副社長はどんな人?

筆者が自動車メーカーで開発部門に在籍していたときのことです。それまで海外販売部門の担当だった副社長が開発部門に担当変更になりました。上司が変ると、部下としてはやはり気になりますね。とくに管理職の場合は、自分がつくった提案を説明し承認してもらう場面はよくあります。どんな人だろうかと話題になっていました。
副社長は人事部門の出身で、それまでに人事部長などを経て、米国事業準備室、経営企画室、海外販売部門など企業の主要部署のほとんどを経験されていました。自動車メーカーの社長として必要な経験で残るところは、技術系の部門だけでした。開発や生産など技術畑は全く経験されていませんでした。それで、今回、開発部門の副社長を担当されることになったのでした。

上司の副社長対策とは 

筆者が所属していた開発部門の担当役員(常務)は気さくな方で「副社長対策をやるから集まれ」と管理職にお呼びがかかりました。管理職は副社長に提案することが多いので、それがうまくいくよう「対策」を伝授するとのことでした。常務によると、提案者がひと通り説明を終えると副社長は決まって「君の提案はデタラメだ!」と言う。そこでそのまま帰ってくると二度目の機会は無い、ということでした。常務はどちらかというと茶目っ気ある人でしたので、聞き手の我々としては「ホントかな」と半信半疑です・・。

君の提案はデタラメだ!

こう言われて、それに対応する伝授の言葉は「副社長は技術がおわかりにならないのでそう思われるかもしれませんが・・」と。そうすると後は素直に聞いてもらえるということでした。提案者の真剣さが試されているということかもしれませんが、出席した同僚たちはそのまま納得というわけにはいきませんでした。上司である常務としては、強烈な一撃に対抗するワクチンを打ったつもりだったのかもしれません。筆者としては免疫ができたつもりでしたが、その後、まもなく早期退職することにしたので、その機会は巡ってきませんでした。

過去に面談の機会がありました

この副社長とは、10数年前、経営企画室長を担当されていたとき、1回だけ面談の機会がありました。
当時の筆者は生産部門のひとつの課に所属していました。そこでは新商品計画の提案が主な業務でした。当時社内で大きな組織変更があり、それに伴って業務プロセスや業務分担の変更が進行中でした。部内で結論が出ない案件があったので、組織変更の発案者である経営企画室のアドバイスをもらうことにしました。本社ビルでひとつ上の階に行き、顔見知りの部長に相談しました。彼が言うには、それは発案者の室長に聞くのがよい、あそこでいま電話中だから、デスクの前にある椅子に腰掛けて待っていなさいとのこと。そうすることにしました。

考え方が間違っているよ

デスクの前ですから彼の電話も聞こえます。英語でのやり取りを聞いていて、米国駐在時のお礼の電話だなと想像しました。電話が終わりました。初対面ですから、自己紹介し用件を説明することにしました。5分ほどの説明をさえぎることなく、熱心に聴いてもらいました。説明が終わったところで、開口一番は「考え方が間違っているよ」でした。「組織変更した意図は新商品計画提案の権限と責任を明確にすること」だから、それに伴い社内の業務プロセスは必然的に変更するところが出てくる。これを丁寧に説明してもらいました。筆者の考え方は、確かに従来のやり方をなぞっただけで組織変更の意図を満たしていませんでした。よくわかりましたとお礼を述べると、「あなたの上司にもこの趣旨を伝えてほしい」との伝言をもらいました。筆者は、このような懇切丁寧な対応に好印象を持ちました。

相手によって対応が変わる

「君の提案はデタラメだ」はちょっと強烈だと思いますが、相手に対する期待値のレベルが高いのでそういう言葉になったのでしょう。筆者の体験した「考え方が間違っているよ」は、彼にすればソフトな表現でした。当時の筆者は管理職ではなく担当者でした。その稚拙な説明を聞いて期待値のレベルを下げた対応だったと考えています。自動車メーカー勤務時の思い出のひとコマです。