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津曲 公二

グラバー園の風景(長崎市南山手町)(旧称グラバー住宅 グラバーはイギリスの武器商人)
グラバー園の風景(長崎市南山手町)
(旧称グラバー住宅 グラバーはイギリスの武器商人)

スーパースターの登場がわが国野球ファンの熱狂を加速

先月開催されたWBCは日本の優勝で幕を閉じました。筆者はプロ野球のファンではありませんが、今回は予選から決勝戦まで日本が戦う全ての試合を実況または録画で観戦しました。大谷翔平というこれまでに存在しなかったタイプのスーパースターの活躍は、日本人だけでなく米国でも話題になったようでした。もっとも米国は日本とは全く異なる大国です。州が異なれば法律も異なる国ですから、わが国のような熱狂的な雰囲気が全米的かどうかはわかりません。しかし、少なくとも決勝戦などが開催されたマイアミ(フロリダ州)では大いに盛り上がった雰囲気だったようです。

国別対抗戦で野球ファン以外も熱狂した

スーパースターの活躍と国別対抗戦ということが、わが国の野球ファン以外の人たちも熱狂させたことは確かなようです。これは高校野球でも同様です。出身地の学校の試合はやはり気になります。たとえ卒業した高校ではなくても同郷であれば応援したい気持ちがあります。これは国レベルでも同じことでしょう。今回の開催は第5回で20カ国が参加したそうです。「野球の世界一決定戦」、このようなイベント企画について米国はきわめて上手です。プロ野球の実況など普通はほぼ観ない筆者でさえ、「世界一決定戦」となれば興味がわきます。しかも今回はケタ外れの日本人スーパースターが出場して、連戦連勝を続けました。わが国の野球ファン以外も熱狂したことはよくわかります。「これで野球人気はまた復活するだろう」との球界関係者の希望的見解がありました。

野球グランド予約は少年野球チーム

筆者の住む大規模団地にはりっぱなグランドがあります。ウオーキングの途中でグランド使用の予約表を見ると、毎週小学生野球チームが登録しており、練習や何かしらの試合が予定されています。このほか、小学校や中学校の校庭なども休日には野球のほかサッカーなどのグループが使っています。ソフトボールの練習にも使われていますが、これは大人だけのグループです。国民的スポーツとしてサッカー人口が増えましたが、ここでグランド使用状況を見る限り野球人口のほうがかなり多い印象があります。

学業以外のクラブ活動に熱中する

学校でこのようにクラブ活動に参加するのは良いことです。筆者は中学時代に理科クラブで楽しい時間を過ごすことができました。顧問の先生のもとで、仲良し三人組もできました。この三人組みで毎年旅行をしていました。それはともかく、野球やサッカーなどのスポーツはプロへの道もあります。高校時代に全国大会などで優秀な成績を残せばプロからの誘いがあります。学業以外でプロから誘いがあるのはその実力なり素質なりが認められることなので、基本的には嬉しいことには違いありません。しかし、これから一生の生活、人生の基盤となるものがスポーツであることに筆者はひとつの不安を感じます。それは、スポーツにおける実力のピークがかなり早期に来て、それ以降はどうしても実力が下降する時期になることです。

スポーツのプロで生計を立てることは難しい

そもそもスポーツのプロで生計を立てることには困難がつきまといます。先ほど述べたように実力のピークが人生の前半に来ること、まずこれがあります。普通のサラリーマンの場合、経験を積むほどに実力は相応に上がります。実力のピークは人生の前半に到来するよりは後半のほうになるでしょう。つまり、年令(勤務)を重ねるごとに経験は積み上がります。経験を積めば相応のビジネススキルが身につくことになり、実力が向上します。これは人生設計を考えるためにはきわめて有利な傾向です。プロスポーツの世界ではこういう有利な傾向はありません。残された人生の時間は多いにもかかわらず、実力はだんだん低下する傾向にある。社会人として生計を立てるには難しい状況が現われることになります。

プロの道選択には本人周囲の理解や配慮が欠かせない

このようなピーク時の実力だけに目を奪われてしまい、本人の人生全体を視野に入れることを怠るとピーク時を過ぎてから人生が思い通りに行かないことに直面することになります。本人がそのようなところまで視野に入れることは難しいことです。周囲の人たち、例えば家族なども高額な契約金などに惑わされて適切な判断ができないことも多くあります。家族以外に、監督やコーチ、先輩などの助言が役立つこともあります。プロからの誘いは場当たりでその場限りのものがほとんどである、このくらいのことを基準において考えるべきと考えます。スポーツで生計を立てることはきわめて難しいのです。それを承知の上で、スポーツ実力のピークを超えてからの人生設計をきちんと考えたりっぱな人もありました。

柔道の父または日本の体育の父

嘉納治五郎(1860~1938年)は、講道館柔道の創始者であり、柔道・スポーツ教育分野の発展や日本のオリンピック初参加に尽力するなど、明治から昭和にかけて日本におけるスポーツの道を開いた・・(出典 ウィキペディア 以下も同じ)。柔道の父または日本の体育の父などと呼ばれていますが、彼は柔道家の仕事として柔道整復師という職業を医療技術として定着させた人でもあります。

スポーツから発展した職業

柔道整復師は古来ありましたが、明治時代には存続の危機を迎えました。嘉納治五郎をはじめとする柔道家による柔道接骨術の公認を請願する運動が実を結びます。第二次大戦後、GHQの介入により再び危機を迎えました。柔道整復術の見直しにより、法整備が進みました。1970年、柔道整復師法が成立し柔道整復師が確立され、国が認める医療従事者となりました。柔道の父は、柔道家が生涯にわたって従事できる職業を国家公認の位置付けとしたのです。野球に限らず全てのスポーツにおいて、指導者の方々は一時的な熱狂にとらわれずこのような視野をもってもらいたいと思っています。