津曲 公二
タラゴナにある円形競技場(タラゴナ県 カタルーニャ州 スペイン)
ローマ時代の1世紀後半から2世紀初めに建設された遺跡群のひとつ 世界遺産
マンション暮らしは出入り口ドアがひとつだけです。一戸建て住宅と異なり、防犯上はここを重点的に強化することができます。カギをもうひとつ追加することは、最近の新築物件では常識になっています。泥棒や強盗などの侵入者にとって、カギが二つあることは侵入においていやな条件になります。なるべく短時間で解錠できることが望ましい条件だからです。泥棒や強盗などの侵入者にとって、玄関ドアのカギひとつとカギ二つを比較したら、標的としてあえてカギ二つの住居を選ぶ理由はありません。カギが余分についている住居は敬遠することになるでしょう。玄関ドアのカギ追加は、居住者にとって費用対効果の高い防犯対策といえます。
筆者のマンションでは玄関ドアなどは共有部分の扱いになっており、居住者だけの意思でこのような施工はできません。そこで、筆者は管理組合に許可してもらうよう問合せをしました。筆者の居住棟には150世帯ほどありますが、玄関ドアにカギを追加しているところを数戸見かけましたので、筆者の場合も当然のこととして許可されるものと思っていました。
玄関ドアやガラス窓などは全居住者の共有財産であり、個々の居住者が勝手に施工できないので、管理組合に玄関ドアのカギ追加を承認してもらうよう相談しました。返事はNOでした。拒否する理由に驚きました。まず、その必要性を認めない。この地域(団地)では盗難などの犯罪は過去皆無だったから、これがその理由でした。
確かに筆者の居住棟は入居40年にわたり盗難などの被害は聞いたことがありません。これまでのところ、そのような実績だったことは事実です。開放的なつくりなので、時おり、不審者が立ち回っているなどの報告もありましたが、治安の問題はこれまで無かったと言ってよいでしょう。だからと言って、居住者の要望を禁止するとは管理組合の防犯意識の低さに驚くとともに呆れるばかりでした。
管理組合として防犯対策について計画的な対応を準備しているので、それまで待ってほしいということなら理解できます。そういうことではなく、「これまで起こっていないから、必要性を認めない。施工は禁止する」ということでした。これでは住民の防犯対策の要請を真正面から拒否することになります。管理組合のメンバーは居住者の選挙で任命されますが、こういう感覚の持ち主がトップだったとはついぞ知りませんでした。カギの追加を認めないなどは、いわゆる「平和ボケ」、「安全ボケ」の典型的な一例です。平和や安全は何もしなくてもこのままずっと続くというのんきな考え、または何も考えない・考えたくない人たちが存在しています。
台湾近くにある沖縄県与那国島での一件を聞きました。自衛隊のレーダーシステム基地建設に住民は賛成したが、自衛隊の駐屯に島民は反対している(もちろん、駐屯に賛成する島民もあります)、その理由は何かあったら真っ先に攻撃されるから、というものでした。反対派のこの考えは「自衛隊が駐屯しなければ、攻撃されない」ということになります。
「真っ先に攻撃する」のは間違いなく中国の侵攻部隊ですが、彼らの攻撃は自衛隊の駐屯があろうが無かろうが関係ありません。彼らが必要と考えたら攻撃するのです。自衛隊の駐屯が無ければ容易に武力制圧できるので、侵攻軍にとってじつに望ましい状況です。自衛隊の駐屯で頑強な抵抗が想定されれば、中国政府は侵攻について考え直し、侵攻を断念することもありえます。「自衛隊が駐屯しなければ、攻撃されない」などは、呆れるほどの幼稚さです。
本エッセーで筆者は「玄関ドアのカギは防犯のためには二つつけるべき」と述べました。自衛隊駐屯反対派は「玄関ドアのカギは何もつけないほうがよい」と言っていることになります。このような非現実的な考えはわが国の左翼勢力の口ぐせと同様なことです。一部住民の非現実的な考えを煽って報道していたのはTV朝日でしたが、朝日新聞と同類の亡国集団ですね。
北朝鮮がわが国の上空を飛来する長距離ミサイル実験を繰り返しています。わが国はその都度、抗議の声明を発表しています。誰でもわかっていることですが、抗議の声明だけでは何の効果もありません。効果的な対抗措置としては、まずトマホークなどの巡航ミサイルを圧倒的な規模で備えることがあります。そして、次には日本海でわが国自衛隊による総合的な軍事演習をやることがあります。北朝鮮の航空戦力は貧弱ですから、こちらとしては航空自衛隊が彼らの領空スレスレまでの空域を使って演習で示威することができます。口先だけで抗議しても彼らは痛くもかゆくもないでしょう。北朝鮮のミサイル実験に対しては、わが国自衛隊の総合的な軍事演習が対抗策となります。口先だけの抗議で、北朝鮮がミサイル実験をやめることはありえません。
泥棒や強盗への対抗策として個人の住宅の玄関ドアのカギを増やす。国家も個人もいずれにおいても、侵攻や侵入に対して効果のある実質的な対抗策は決して欠かすことができません。