• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

バルセロナの地下鉄にて(バルセロナ カタルーニャ州 スペイン)
バルセロナの地下鉄にて(バルセロナ カタルーニャ州 スペイン)

男子(も女子も)外に出れば7人の敵あり

前回、ここでとり上げた諺そのものは男子限定の表現ですが、現代では男女を問わず適用すべきものになりました。今回はこの続きです。首都圏の地下鉄にはこれまでの地下鉄よりもさらに深い部分に建設されたものが目立つようになりました。そのために地上から地下鉄乗り場まで長いエスカレーターを利用する機会が増えています。最近では「エスカレーターで歩かない(もちろん、走らないも含まれます)」キャンペーンが始まっています。つまり、じっとしているべきということです。エスカレーターは公共交通を中心にどこにでもある便利な設備ですが、利用者はその潜在的なリスクをほとんど感じることは無いように見えます。

エスカレーターで転ぶとどうなるか

観光旅行で行ったバルセロナ(スペイン)の地下鉄エスカレーターで、筆者は転んだことがあります。下りのもうすぐ終わり、終点まで階段であと4つくらいのところでした。後ろの人が転んだために筆者もそのあおりをうけて転びました。エスカレーター終点まで、尻もちをついたかっこうのまま移動しました。終点で立ち上がることができません。お尻の部分のエスカレーターの階段部分はどんどん移動するので、手をつくこともできません。ピカピカの側壁部分はつかまる部分が何もありません。結局、付近にいた人が駆けつけて手を出して引っ張ってくれたので立ち上がることができました。下りのエスカレーターでしたが利用者がもっと多かったら、筆者は上部の人たちの下敷きになっていたかもしれません。利用者が少なかったのが不幸中の幸いでした。

エスカレーター 上りと下りはどちらが恐いか

何ごとも視界が悪いことは、異常事態が発生したとき認知が遅れるという欠点があります。エスカレーター利用中の視界は、常に自分よりも下部は把握できますが、自分より上部の視界はほぼ遮られます。異常事態が起こったとき、それをすぐに認知できるかどうかは事故の被害を減らすための重要なポイントになります。

 下り利用時:自分より上部(後部)の状況は、わかりにくい。
 上り利用時:自分より上部(前部)の状況は、わかりにくい。とはいえ、
       事故発生時には下り利用時よりも早期にわかる(気づく)。

ここで利用者が下敷きになる事故を想定してみます。事故は雪山の雪崩のようなものとすると、下りエスカレーターのほうが、より被害が大きくなりそうです。事故発生の認知が遅れることに加えてエスカレーターの動きが雪崩の方向と一致するからです。バルセロナで転んだときも下りエスカレーターでした。下りのほうがより恐い、筆者の結論です。

モスクワ地下鉄の長大なエスカレーターでびっくりしたこと

ロシア出張時、有名な地下鉄を利用しました。駅の深さ84mは、敵国からの爆撃に耐えるものとして建設されたと聞きました。ちなみにわが国の首都圏地下鉄では、千代田線、半蔵門線や大江戸線などが深いところに建設されていますが、30~40mほどの深さだそうです。

モスクワ地下鉄はホームも広く、写真撮影すると美術館や博物館のような場面もあります。またその長大なエスカレーターにもびっくりしたことがありました。手すりにつかまっていると、下りで姿勢が真っ直ぐに保てずだんだん倒れそうになりました。階段と手すりベルトの動きがぴったり一致していないのです。わが国と比べると、深さが2倍ですからベルトも2倍の長さになります。階段と手すりベルト、それぞれの動きをシンクロさせるためにはそれなりの技術が必要なことは理解できます。ロシアは軍事技術にはカネをかけてもこういう面は疎かにしていることがよくわかりました。

ロシアの地方都市ボルゴグラードで驚いたこと

2016年、ロシア出張でこの都市を訪問したことがありました。旧名はスターリングラード、人口100万ほどの地方都市です。フルシチョフによるスターリン批判で旧名から改名されたと聞きました。訪問時の世話役は現地の商工会議所メンバーでした。仕事のほかに名所や旧跡を案内してもらいました。「ヒロシマ通り」がありました。先の大戦でここと広島はとくに戦争の惨禍が甚大だったので友好都市になっているそうで、戦争記念館には広島市から贈られた「平和の鐘」が展示されていました。名所のひとつとして「地下鉄の駅を見て欲しい」と案内されたのには驚きました。地元の自慢のひとつだったのでしょう。同行した通訳は日本語習得のため、日本(東京)での留学経験があります。東京の交通事情は地下鉄も含め承知の上だったと思いますが「つきあってあげてください」といった雰囲気を含んだ通訳でした。ここの地下鉄はあまり深いところには無く、路線長もさほどではなかったのですが、かの地では自慢するに足るものだったのでしょう。

ロシア出張は2015年から5回ほどでしたが、モスクワとサンクトペテルブルクなどの二つの都市を除くその他の地方都市も10都市以上訪問しました。これらの諸都市は、モスクワとサンクトペテルブルクに対して大きな格差を感じました。「地下鉄の駅を見て欲しい」という要望は、ロシア地方都市の格差を代表するものと感じました。