• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント

津曲 公二

カタルーニャ音楽堂(バルセロナ カタルーニャ州 スペイン)
カタルーニャ音楽堂(バルセロナ カタルーニャ州 スペイン)

楽しさいっぱいスペインのバル巡り

これは本エッセー第39回で紹介しました。地獄の沙汰もカネしだいと言いますから、サービスに限らず、どの国でもおカネしだいという傾向はあるでしょうが、バル(居酒屋)とレストランに限れば、スペインはわが国より抜きん出ていると感じます。バルセロナでの出張時の体験以来、筆者は観光目的で幾度もスペインを訪れています。マドリッドのバル激戦地区では、ドリンク1杯ごとに無料のお通しがついてきます。杯を重ねるたびに異なるものが提供されます。バルセロナでも激戦地区はあるはずですがこのような無料のお通しサービスは無さそうです。地方都市で有名なバルに行ったことがあります。超満員でしたが、りっぱなお通しがきちんと人数分がついていました。もちろん、こういうサービスが無くてもビールやワインを注文して何かつまみが欲しければ自分で注文することになります。

わが国はスペインとは大違い

スペインでは勝手にお店から何かお通しがついてくることは経験したことがありません。まして、そのお通しの代金を請求するなどあり得ないことと思われます。そのようなあり得ないことが、未だに堂々とまかり通るのがわが国の居酒屋の一部では常識になっています。筆者は、日本は素晴らしい国と思っていますが、ことが居酒屋のお通しに限っては全くのところ消費者無視のお粗末な商習慣と思っています。お通しは一例ですが、飲食業界のお粗末なビジネス姿勢についていくつかの体験を述べます。

うちではいつもそうしています!

最寄り駅の周辺にあるレストランでの体験です。夕方、夫婦でイタリアンレストランに行きました。席は50%ほどの混み具合でした。店員が案内したのはトイレドアのすぐそばの席でした。
ここはいやなので広々とした席に変えてほしいと告げたら、無言で他の席を示しました。第一印象で×ひとつがついた感じでした。料理とワイン1本を注文しました。しばらくして、まずワインのボトルが届きましたが、既にコルク栓が開けられていました。まあ、アルバイターならその知識は無いだろうと思い、ワインの栓は客の面前で開けるものだと伝えました。それを聞いていた店長らしい人物がカウンター越しに言いました。「うちではいつもそうして(開栓してから届けて)います!」。筆者が期待したのは『アルバイターゆえ、そういうことに気付かず失礼しました』という釈明の言葉でしたが、まさに真逆でした。こういう人物が経営するお店では仕方がないと思って「それなら、注文はすべて取り消す。このまま帰るが文句は無いね」。ワインは開栓したし、注文した料理には着手しています。これらの売上は無くなりますからお店に迷惑をかけることになります。とはいえ楽しく食事できる雰囲気は無くなりましたから、引き上げるのがよいと思いました。店長らしい人物から返事はありませんでしたが、そのまま店を出ました。これ以降、そのお店には行かず他のお店にしています。

東北の地方都市で駅近くの居酒屋に行きました。まずこういう有料のお通しがあるかをたづねました。チェーン店らしい大型店でけっこう賑わっていました。マネージャーらしい人物の応接で言葉使いは丁寧でしたが、明らかに「そういうことを言うのは客ではない」という感じでした。このお店のすぐ近くにある少し小さめの居酒屋に行きました。ここはそういう追加料金は無いとのことでした。個人経営のお店で、料理もなかなか良い出来映えでした。ご主人自らが仕切っていました。ここで楽しい時間を過ごすことができました。

席料ひとり¥500に驚く

よく行く地方都市でひいきのお店が休業だったので初めての居酒屋に行きました。かなり繁盛しており、メニューも豊富でした。ただ、ここは「席料ひとり当り¥500」でした。メニューのページにこの金額が明記してありましたが、店内に掲示してある料金表には「席料」は見つかりませんでした。居酒屋に席があるのは当たり前です。居酒屋において料理の代金以外に席料をとるとはどういうリクツになるのでしょうか。もちろん、これが違法だと言っているのではありません。経営者はどういう価格設定をしても最終的には消費者が支持するかどうかです。このお店は繁盛しているようでしたから、消費者は最終的には支持していることになるのでしょう。

経営者のさもしい根性が透けて見える

席料は明らかに居酒屋経営に関わる経費の一部です。本来の商品である料理の原価を構成する一部に過ぎません。料理の価格を上げるのはためらうが、消費者を紛らわせるような席料設定にはさもしい根性が透けて見えます。

本来商品の原価を構成する一部だけをとり上げて顧客に請求する(値上げする)ことが認められることはあります。原油価格が大きく変動したとき、航空運賃はその部分だけ区別して料金を値上げしたことがありました。2000年ごろだったと記憶していますが「燃油サーチャージ」として値上げ分が識別して表示されました。

消費者が納得できる価格の合理性が必須

お通しは居酒屋で提供するサービスとして、有料にするなら通常メニューとの整合性が欠けています。まず客に選択の自由がありません。料理メニューと基本的には同類を客に強制的に押し付けることになっていますから、合理性は何もありません。

映画館や交通機関では「席料」に差があります。これは、より快適性があったり付属するサービスがあったり、そして客に選択の権利が残されています。従って、席料(価格)の差には相応の合理性があります。ここで述べた居酒屋のような不合理なやり方が現存しているのは、この業界の前近代性を感じます。外国人観光客はこのようなことでトラブルになることは目に見えています。それはわが国の評判を落とすことになります。政府や行政が指導に乗り出す前に業界自体で改善や改革が動き出すことを期待しています。