• クリティカルチェーン TOCによるプロジェクト・マネジメント
カルーガ駅 駅舎(カルーガ州 ロシア)
カルーガ駅 駅舎(カルーガ州 ロシア)
豪華な白亜の建物 内部は‘60年代のまま保存

4.5 対 2.1

使う立場 = システムを実務で使うエンドユーザー(対象ユーザー)の評価で

「Aシステムは4.5点と高評価」
「Bシステムは2.1点と低評価」

この結果は、私にはショックでした。
A、Bシステム共に従来から重視された依頼する立場、つくる立場の評価で充分及第点を得たシステムです。特にBシステムは、半年以上の期間を掛けヒト、モノ、カネと情報を投入し開発したにも関わらずこの低評価です。
正直「なんでこんな結果になるの?」とガッカリです、ただし同時に「なぜ この結果になったのか?」その理由を知りたいとの思いがありました。

Aシステム:小規模・利用者少数な「目で見る緊急連絡」システム 
Bシステム:大規模・利用者多数な「構成表システムの高度化(製造日程自動作成、流用設計、など等)」システム

高い評価(4.5)のAシステム

なぜか?結論から言えば、システム利用者が想定の10倍近い200名以上で、その利用者の多くがアンケートで高い評価を示してくれたおかげです。
Aシステムは、情報弱者になり易い20数名の聴覚障害者従業員への支援をテーマにし、わずか一か月ほどで作り上げたシステムです。
実は、聴覚障害者従業員以外にも多くの人達が抱えていた問題があったのです。それは、「騒音職場では内容が聞き取れ無い、スピーカーの位置で聞きにくい人がいる、移動中の時に内容がわからない、もう一度聞く/内容を確認する手段が無い、放送設備強化予算が取れず改善が難しい」等など。それらの問題は設備投資が伴うこともあり改善は難しいと半ば諦めていたのが、Aシステムの稼働で問題がすべて解消することができたのです。
つまりAシステムが「要求された以上の大きな効果を実現した」ことがシステム評価4.5になった理由でした。

低い評価(2.1)のBシステム

Bシステムのアンケート回答数は、設計者の約40%となる400以上あり、高評価から低評価まで「ばらつき」の大きなアンケート回答です。
なぜ低評価だったのか?結論から言えば、期待が大きなBシステムだったが、思ったより効果が少なく不満が多かったためです。
次のような意見があり、厳しいものが大半を占めていました。
 ―「見積支援や廃止品アラーム機能は、助かった」
 ―「もう少し使い勝手が良ければ少しは使えるのに」
 ―「改善できてない、機能不足で使えない、以前の方がマシだ、この程度なら別のシステム開発/改善をして欲しい」等

Bシステムプロジェクトチームは、多数の部門(クロスファンクションチーム)が参加した活動でメンバーが各部門の代表者となり各部門の要求をまとめ提案し承認された機能を開発しました。
ただ開発予算は限られているため、承認された改善機能の実現をまず優先しており、多少の使い勝手の悪さなどは犠牲にしていました、また多くの小改善要求は、開発さえしていませんでした。
このような機能不足や多くの要求に対する未開発への不満がシステム評価2.1になった理由でした。

私の評価 A,Bシステムは共に失敗プロジェクトであった!

従来の評価では、A、Bシステムとも成功プロジェクトです。使う立場の評価でもAシステムは、成功プロジェクトでしょう。
しかし実際には、「A、Bシステムは、共に失敗プロジェクト」でした。
両システムともプロジェクトとして最初に定義しておくべき必須項目である、

「真のシステムユーザーが誰なのか、その求めるものが何なのか」

これが定義できていなかったからです。
Aシステムは、想定の10倍近くのユーザーがいたのです。彼らの求める機能もあったはずですが、まったく議論もされていませんでした。高い評価は、運が良かったにすぎません。
Bシステムは本来プロジェクトを推進する担当であるべきプロジェクトメンバーが部門の利益代表者として部門要求を伝える人でしかなかった。これでは大きな効果が期待できる全体最適の仕組みとなる「システムのあるべき姿(完成の姿)・目的」が描けませんでした。

後日Bシステムのフェーズ2では、この使う立場の評価の反省を受け
 ・プロジェクトのスタート時にメンバー全員が「あるべき姿」(目的・ゴール)を共有する
 ・開発は、優先度の高い(確実に効果が見込める、今すぐ行うべき)施策を一括投入し完成を図る
 ・スケジュールと担当を明確にする(どのフェーズでどんな機能を実現するのか)
などを明確にして進めた結果、フェーズ2の使う立場の評価は、2.1→3.5に向上しました。

 1. 依頼する立場 =ビジネスオーナー(システム開発の依頼部門)
 2. つくる立場 =システムオーナー(システム開発の担当部門)

これらの従来から行っている2つの視点は、もちろん意味があり重要で継続すべきですが、

 3. 使う立場 =システムを実務で使うエンドユーザー(対象ユーザー)

この視点は、今まで気が付かなかったシステムへの新たな気づきや問題点などを明らかにする手段になります。このような使う立場での視点は、現在では当たり前の常識として定着していると思います。しかし、評価の結果と検討・分析は、改善の次のステップに必ず役立つものです。
ぜひ皆さんも3つの視点の評価を着実に実践してくださるようお薦めします。

2020.6.15 冨永宏志