冨永 宏志
ある会社が20数年ぶりに社内運動会を復活させたとのニュースを聞きました。
その目的は、もちろん社員間のコミュニケーションの改善を図ることでした。社内イベント請負会社によると、5年前には年間50件程度だったものが、現在は200件以上と4倍になっているとのことです。社内イベントが果たす役割が再認識されてきたのかもしれません。
皆さんの会社では、社内イベントを継続して開催されているでしょうか?
おそらくこの20年~30年間で、規模縮小を経て削減され、残っているのは企業PRイベントや、歓送迎会等のごくわずかなイベントだけになっているかもしれません。
さらに、少なくなった社内イベントも今年は、新型コロナ禍の影響で「三密」を避けるために休止や中止となっているかもしれません。
社内イベントが、だんだんと削減された頃から従業員間のギクシャクが多くなってきたように私は感じています。
そこで、私の提案は、新型コロナ禍が収束したら、「社内イベントを再開拡大しましょう」です。
1.プロジェクトマネジメント
2.コミュニケーション向上
今回は、プロジェクトマネジメントの視点から「社内イベントの中止や縮小は、大変もったいない」をお伝えします。
では、社内イベントはなぜ中止や縮小されるようになったのでしょうか?
・慣習で続けているだけなら時間の無駄
・海外ではこのような社内行事は皆無
・人が集まらない(時間が取られるのは嫌だ)
・就業時間外に社内の人と過ごしたくない
などの意見が聞こえてくるので「とりあえず止めてみるか」との軽い判断だったのかもしれません。私も管理職の頃はあまり深く考えもせず中止した記憶があります。
しかし、社内イベントの中止や削減は、実のところ「プロジェクトマネジメント力」を向上させるための貴重な機会を捨てることになるのです。
プロジェクトを成功に導く力が「プロジェクトマネジメント力」です。
この育成には、リーダー候補者に時間と費用をかけ知識を習得させた上で、実務を通し身につけて行くのが一般的なやり方です。
特に現実のプロジェクトにおけるリーダーの失敗は、金銭的な損失やメンバーへの負担増などさまざまな形で会社に損害を与えるため、いきなり「今回は試しにA君にプロジェクトリーダーをやらせてみよう」とは、なかなか踏み込めません。そういう事情もあって徐々に責任ある立場の体験を積みながらリーダーを育成していきます。このような育成プロセスを振り返ると、社内イベントはプロジェクトリーダーの立場を体験する絶好の機会になるのです。
例えば「課内旅行を開催するから、A君に幹事を任せる。よろしく頼む」は良くあるケースです。
指名された幹事A君は、目的地の決定、旅行日程の作成、参加者の確定、予算(費用見積り、会費徴収)など数多くのタスクをこなしたうえで、基本的には課内旅行の成功を請け負うことになります。
つまり課内旅行とは、プロジェクトの3要素である目的、納期(開催時期)、リソース(対象者、予算等)が明確なことからプロジェクトと定義できますし、幹事は、まさにプロジェクトリーダーそのものを意味します。
となれば現実のプロジェクトと同様、「課内旅行プロジェクト」で得られる成功または失敗、失敗要因の分析、分析結果から得た知識、失敗回避策立案等は貴重な経験となることでしょう。
またこのプロジェクト最大の特徴は、もし失敗してもその実害は現実の業務プロジェクトに比べれば無いに等しいことです。
つまり社内イベントのリーダー体験は願っても無い機会と言えます。
これがお伝えしたかった「社内イベントの縮小や中止は、プロジェクトマネジメント力向上の手段を捨てるもったいないこと」の意味です。
さらに「社内イベントを拡大しましょう!」に追加する改善提案です。
再開するにしても、従来通りで「A君が幹事だ、よろしく!」だけでは、やらされ感いっぱいの幹事となります。
これでは育成効果は、望めません。
そこで社内イベントの開催を援助することが欠かせません。
目的は、援助することで従業員が参加しやすくなります。さらに重要なのは幹事指名時に「このイベントで得られた経験は、プロジェクトにも活かせる!」とマネジメント力の向上の場であることを明確にすれば目的意識の向上につながります。
社内イベントは確実に「プロジェクトマネジメント力の育成」に役立ちます。
グーグルの「なぜ社内プロジェクトチームに生産性の高低があるのか?その理由を明らかにする」プロジェクト・アリストテレスは良く知られています。導き出された結論は「成功するプロジェクトチームの構築に最も重要なことは、心理的安全性である」でした。この「心理的安全性」こそが、チームのメンバーがそれぞれ不安を抱えることなく、自分の考えを自由に発言できたり、行動に移したりできる状態をつくり上げる、このような結論でした。
社内イベントの拡大は、この「心理的安全性」の醸成、つまり「安全・安心な場の確保」にも役立つことになるでしょう。
社内イベントを拡大しましょう!
次回は、もう一つの視点 コミュニケーション向上をお伝えします。