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安全性設計を誤まった太閤秀吉

司馬遼太郎の「新史太閤記」は秀吉の天下取りの物語である。 秀吉は信長に多くのことを学ぶが、天下統一の戦略は正反対の路線で成功した。しかし、豊臣政権を安全に終息させることには失敗した。システムの安全性設計を誤まったのではないか。
品質工学界の鬼才、長谷部光雄氏の新著「タグチメソッドのはなし」を読んだ。安全性設計は誤解されているという。 機能が安定して発揮されるために安定性設計がある。一方、安全性設計はシステムが機能不全に陥ったとき安全(低損失)にシステムを終息させるためにある。つまり、両者は目的から異なるのである。
秀吉が健康なうちは政権の安定性は保たれていた。秀吉の死により、政権は戦乱のもとに壊滅した。 つまり、甚大な損失のもとにシステムは終息した。政権が平和裏に交代し、豊臣家は諸侯の一員として存続する選択肢があったはずである。これこそ、秀吉が本来目指すべきことであったろう。
晩年の秀吉は政権の行く末に苦慮していたが、この選択肢をとることができなかった。
長谷部氏の新著は、愛読書を読み返したくなる良書としてお勧めしたい。 


津曲 公二
株式会社ロゴ 社長