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最新のエッセー

第76回 非常事態に備える~あったらいいねと必須条件を識別する

津曲 公二

扇状地にびっしり建つ住宅
広島駅前のホテルから 筆者撮影(広島市)

目的は呉市にある大和ミュージアム

休日を使って妻と二人で広島に旅行しました。今回の目的は大和ミュージアム見学でした。筆者の子どもたちの世代では「宇宙戦艦ヤマト」がおなじみですが、筆者の場合は「戦艦大和」です。ここに隣接して「てつのくじら館」があると友人が紹介してくれました。
「鉄の鯨」とは潜水艦のことで、遠くからでもとくに目立つ存在でした。隣接する3階建てのビルと同じ高さに退役した海上自衛隊の潜水艦が設置されていました。ビルではさまざまな説明の展示があり、最後に潜水艦の内部を見学できました。大和ミュージアムとともにこれも初めての経験でした。旅行の目的とは別に、広島訪問でとくに目についたのは山あいの扇状地に建つ住宅でした。

扇状地にびっしり建つ住宅

平成30年(2018年)7月の豪雨は広島県にきわめて大きな災害をもたらしました。筆者はこのとき初めて、扇状地に住宅がびっしり建っていることをテレビニュースで知りました。広島地方は山からすぐ海になり平地が少なく、そのため山あいの扇状地も宅地として開発されたと伝えていました。
今回の旅行で広島駅から呉駅までを電車で往復しました。車窓からの景色は海辺とその反対側は山か山あいにある住宅でした。扇状地に建つ住宅も多く見うけました。山間部で豪雨があれば、土石流は扇状地に押し寄せます。巨大な自然の力に抵抗できる対策は難しいでしょう。従って、災害時のここでの対応は注意報や警報に忠実に従い安全なところへ避難するしかありません。

タワーマンションは安全か

広島駅周辺には狭い平地を有効に活用するための高層マンション、いわゆるタワーマンションが建っていました。宿泊したホテル周辺には30階や40階を超えるものがありました。この場所なら扇状地のような土石流による被害は無いでしょう。扇状地よりはずっと安全ですね。
ところが、タワーマンションには高層ゆえの弱点があります。高層への移動にエレベーターという設備が必要ですし、そのための電気が欠かせません。水道も停電になると使えなくなります。
つまり、タワーマンションの避けられない欠陥は停電にあります。

住宅選択で何を重視するか

何ごとであれ選択においては判断のために重視する観点があります。そして、その観点は人によってそれぞれに異なります。観点は次のように大きく二つに分類されます。具体例については住宅選択の場面であてはまるものを書いてみました。

【二つの分類】
 1.無くてはならないこと(必須条件)
 2.なるべくならそのほうが望ましいこと(あったらいいね)
【具体例】
 ・自然災害のリスクや治安
 ・自然環境(景色がよい、空気がきれい・・)
 ・生活インフラ(学校、病院、スーパー、自治体施設・・)
 ・公共交通、道路網
 ・購入価格と維持費、賃貸料

タワーマンションの魅力は高層ゆえの景観、景色がよいことでしょう。立地によっては駅が近いなどの充実した社会インフラも大きな魅力となるでしょう。反面、災害時の停電は生活に必要な機能回復までに長期間が必要となります。これは、場合によっては致命的となります。重視する観点は人によって変ります。どれを重視するかはさまざまです。しかし、判断にあたって何が「必須条件」であり、どれが「あったらいいね」であるかをきちんと識別したうえで行動することが欠かせません。自然災害が起こるたびに「赤信号、みんなで渡れば恐くない」のような行動の繰り返しがまだまだ存在します。残念なことです。

リーダーに今こそ求められる非常事態への備え

わが国は戦後70年以上の間、自然災害は多発しても戦争などの国際的な紛争による災害は避けることができました。ところが、コロナ禍をはじめとしてこれまでに経験したことの無い非常事態が起きています。そして、その対応は必ずしもうまくいっているとは言えません。
わが国の周囲には独裁国家が三つもあります。さらに、極端な反日の国もあります。四つの国全てがわが国とは異なる政治状況ですから、油断は禁物です。非常事態がいつ起こるかわからない高いレベルの不確実性がつねに存在します。これに対するわが国の非常事態への備えはまだまだ緩い動きのままです。70年以上続いた平和が、わが国全体の意識をすっかり緩ませてしまったのでしょうか。

これらの非常事態への備えは政府の仕事であると、無関心を装う大企業のトップが少なからず見受けられます。とんでもない考え違いです。
わが国は国民主権を基本とする民主主義の国家です。しかし、周囲の四つの国は明らかにわが国とは異なります。非常事態への備えはきわめて重要です。これらは決して「あったらいいね」などではなく「必須条件」そのものです。自然災害時の警報や対策よりもさらに大事な必須のものです。これは空振りになっても、あるいは使われなくてもよいのです。何もしなかった場合、つまり想定と対応策が不十分な場合、わが国全体に大きな災禍を招くことになるのですから。


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