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第43回 テスラとアップル おつき合いしたいのはどちら?

津曲 公二

充電中の日産リーフ(レンタカー マドリッド スペイン)
充電中の日産リーフ
(レンタカー マドリッド スペイン)

日産とアップルの交渉打ち切り

米国アップル社は自動運転技術を搭載した電気自動車(EV)計画を進めています。同社は日産自動車にEV車の生産委託の提携を打診していましたが、交渉は不調に終わったそうです。

アップルカーは相乗りが難しい?

アップルのEV計画では、韓国の現代自動車と起亜自動車にも日産と同じような交渉をしていたそうですが、いずれも協議の中断が明らかになっているそうです。アップルは日本を含めた世界の自動車メーカーに幅広く声をかけているようです。しかし、交渉がなかなかまとまらないので、業界では皮肉まじりに「相乗りが難しいアップルカー」との見出しがつけられています。

アップルはすべて外注

アップルは、スマートフォンの生産を台湾の鴻海精密工業に委託しています。自社では企画・開発・設計のみで生産はすべて外注しています。日産の立場は鴻海のようなアップルの受託生産メーカー、つまり下請けの位置付けになるわけです。
従って、提携といっても自動運転のノウハウは全く共有できないでしょう。日産としては電気自動車のすべてに関わるこれまでの技術やノウハウについて多くの蓄積があります。これらを一方的に提供するだけになりかねません。これでは何の魅力も感じなかったと思われます。日産は適切な判断をしました。アップルは、クルマもスマホと同じ感覚で交渉したのでしょう。頭が高い交渉の好例です。
GAFAと呼ばれる飛ぶ鳥落とす勢いの米国企業はこんなものかなと思っていました。ところが、同じ米国でもアップルとはひと味違う企業があることを知りました。

テスラは時価総額で業界トップに

米国テスラ社は、電気自動車販売に限れば世界トップメーカーです。自動車全体で言えば、トヨタやドイツのVW社が圧倒的にトップを競っています。ところが昨年末に同社の時価総額が、既存の大手自動車メーカーを上回りトップとなりました。投資家はテスラを伝統的な自動車メーカーとしてではなく、ハイテク企業として期待しているわけです。
同社のイーロン・マスクCEOは自社の株価は高すぎるとし、同時に初期のころ、テスラはほとんどの自動車メーカーに無視されていたと言っています。そのような自動車メーカーの買収は選択肢にあるかと問われて、彼はそれには条件があると答えたそうです。

買収するときのテスラの条件

敵対的な企業買収は絶対に行わない。友好的で「テスラと合併するのも悪くないね」という感じの話なら、乗ってもいい。こういう条件だそうです。おカネにモノを言わせて、ということではないのですね、素晴らしい見識です!GAFAに代表される利益効率一辺倒、つまり儲かりさえすれば何をしてもよいとする経営スタイルとは段違いに異なるようです。

ものづくりは難しい

テスラは自社工場で生産しています。アップルのように生産を外注しているわけではありません。工場で問題が起こると彼自身が世界中を飛び回っていました。CEOが工場長を兼ねているように見えました。
電気自動車は、つくって走るだけなら大学のサークル活動でも個人の趣味でも問題なく走るクルマができ上がることでしょう。ところが、それをビジネスとして世界中に大量に販売するとなると、話は全く変わります。
生産工場の維持、多くの外注メーカーからの部品調達、酷熱の砂漠から極寒地域までの走行耐久性、衝突安全性、耐久消費財としての保証とサービス、マーケティングや再販価格の維持、世界を網羅する補修部品供給網、リコールへの対処、そして米国のような訴訟社会での対応等など、自動車ビジネス特有の経験やノウハウの蓄積が欠かせません。

テスラと合併するのも悪くない

自動車ビジネスはこのように裾野が広いのです。生産を自ら手がけることにより、イーロン・マスクさんはものづくりの難しさと奥深さを実感されたのだと思いました。「テスラと合併するのも悪くない」という言葉に経営者としての謙虚さを感じます。これは同時に、日本の自動車メーカーへのラブコールかもしれません。楽しみな展開が期待できそうですね。

参照記事  英紙FT電子版2021.2.14 Tech Crunch Japan 2020.12.02


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