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第118回 見るからに危険な住宅を購入する消費者~水害被害原因のひとつは民度の低さ

津曲 公二

扇状地にびっしり建つ住宅 広島駅前のホテルから 筆者撮影(広島市)
扇状地にびっしり建つ住宅
広島駅前のホテルから 筆者撮影(広島市)

南欧に多い山林火災

海外ニュースを見ると、南欧(スペイン、ポルトガル、フランスなど)では暑くなると、熱波により山林火災が多発するようです。被害は山林だけでなく隣接する住宅にも発生します。同様な山林火災は米国でも発生しています。わが国は台風や集中豪雨による水害が多いので、水害の無い南欧はいいな~と思っていました。ところが山火事が頻発するのを知って、どの国でも災害はつきものだと思いました。スペインに旅行したとき、山林火災は放火によるものもあると聞きました。放火も含め、山林火災の対策は基本的に無理でしょう。しかし、山林火災では人的被害(死者)はわが国の水害に比べれば極端に少ないようで、ニュースで死者が出たなどほとんど聞いたことがありません。対策としてはいざというときは逃げるしかありませんから、物的被害はあっても人的被害が少ないのは当たり前なのでしょう。

広島陸軍病院の遭難

トップ画像は広島市の山あいの扇状地に建つ住宅です。扇状地は集中豪雨のとき土石流の通り道になります。広島市は平地が狭いので、土石流リスクのある地域が宅地として開発されると聞きました。
1945年9月の枕崎台風は敗戦後の疲弊したわが国に大きな被害をもたらしました。広島市にあった大野陸軍病院では敷地の中央を貫流する丸石川の大規模土石流により大きな被害が発生しました。丸石川の丸石とは上流からの岩石が丸くなるという意味なのでしょう。土石流災害の経験から、先人たちがそのように命名したのではないでしょうか。

わが国の自然災害は毎年大きな被害を引き起こしている

南欧などの山林火災に比べてわが国の場合は、必ず人的被害が発生します。農業従事者が用水路の状況把握のため出かけての遭難なども、しばしば発生します。単純に増水した河川や潮位が増した海岸を興味本位で出かけての遭難なども絶えることがありません。これらは、テレビなどでしつこく警告しているにもかかわらずなかなか無くなりません。自然災害大国に住んでいるという自覚に欠ける行動です。「民度が低い」という表現があります。自然災害に対する知識と行動についても、民度のレベルが反映することは言うまでもありません。

被害多発地域からは転居すべきだが

当たり前のことですが、台風や集中豪雨などの自然の脅威そのものを無くすことはできません。あくまで発生したときの備えを充実させるしかありません。浸水や土石流の被害を土木工事で防止することは財政的にも技術的にも限界があります。被害を軽減できる確実な対策としては、その地域から移転することしかありません。しかし、農林業など地域密着型ビジネスの場合は難しいことでしょう。また、マイホームとして自ら購入し長年にわたり住み続けた場合なども転居しがたいでしょう。いずれにせよ、転居しない場合は早期の避難行動しか実効ある対策はありません。近年、地域のハザードマップなどの情報公開がされるようになりました。これらの情報を地域の防災組織で活用して、いざというときの早期の避難行動に移ることが唯一の対策となります。「命を守る行動をとってください」という呼びかけがされるようになりました。自然災害に対する民度のレベルアップが的確な行動につながることを期待しています。

見るからに危険な住宅物件が堂々と販売される現在のわが国

わが国はきわめて高いレベルの法治国家と思っています。食品、医薬品、家電製品やクルマなどは安全性に対して厳しい法制度があり、国民の利益と安全が確保されています。ところが、こういう住宅物件を販売できるのかと疑問に思うことがしばしばあります。筆者の見たことから次のような2件を紹介します。

①谷間を埋め立て、一戸建て住宅を建設し販売
谷間の深さは10~20メートルほど。埋め立ててから住宅建設完了まで半年ほど。埋め立てた土地そのものがしっかりするための時間が全く足りないのではないか。集中豪雨で土地そのものが流失すれば住宅は崩壊消失する。

②山の半分ほどを切り崩し、跡地に一戸建て住宅を建設し販売
残った山の半分は、ほぼ垂直な斜面(高さ約20メートル)になった。この斜面は崩落防止措置など全く無し。そのすぐ横に販売する住宅がある。集中豪雨で斜面が崩壊すれば土砂が住宅を埋め尽くす。

住宅建設は地方自治体の認可が必要なはずですが、土地そのものの適格性は全く問われないようです。上述した②などは現地を見れば危険性は明らかと思いましたが、完売したようです。つまり、自治体の認可は土地や建物の安全性を保証するものでは全く無いということです。

これらの危険度の高い住宅を購入する消費者がある

上記物件以外にも、見るからに危険な物件は他にも見聞きしました。筆者が理解に苦しむことはこれらを購入する消費者が多数存在する、ということです。前に述べたように食品、医薬品、家電製品やクルマなどは国の基準や規制があります。例えば、クルマを購入して「欠陥車」は無いことが基本です。ときに欠陥があってもわが国のメーカーは誠実に対応してくれますから、安心して購入できます(これは新車に限ります。中古車購入の場合の安心度は販売会社しだいです)。住宅購入は、一般的な市民にとって最も高額な買い物になるはずです。それにしては、消費者としての知識が足りな過ぎると感じます。

わが国は台風や集中豪雨による水害が多いことはわかりきった事実です。それにもかかわらず、危険度の高い住宅物件を購入するとは、民度が低いと言わざるを得ません。地方自治体の住宅建設の審査を充実させれば対策のひとつにはなるでしょう。しかし、それ以前の問題として、購入者の低過ぎる民度レベルが大きいように思います。


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